情 状 酌 量 。

もやもやしつつ、もやもやしない。

幸せな家族の会話

 

先日友人の実家にお邪魔した。

 

行ってすぐ夜ご飯を食べ始めて、30分以内には彼ら一族の会話に私も一緒になって爆笑していた。

 

確か一つは中国の旅行に行った時、誰々さんが、筆談でお店の人に何かを伝えようとして、漢字で文章を書いた後にレ点を打ったという話。

 

で、もう一つは、友達の妹の婚活話だった。

 

妹が手取り11万の彼氏のことを話すと、友達(兄)と私が心配して、結婚への心構えみたいなことを話すが、最初から話の切り口が月収だったせいか、どうしても心配しているこちらがお金で人を選ばせようとしているような響きになってしまっていた。

私と友人はどちらかというと文芸的な思考をするタイプだから、お金で人を選ばせたい考え方をしている人たちではないのだけど、妹はモデルの仕事をしていたりして、まあまあお金が要りそうな性格なこと、そして話を聞いていると、その彼氏にはお金もない、才能もない、しっかりとした自分の物の見方を持っているわけでもない、野心があるわけでもない、すごい好きでたまらないというわけでもない・・・という感じだったので、どうしても、

「何があるというわけでもない、そしてまだ結婚どうしようという踏ん切りがつかない状況なら、ある程度の収入のある人を探したら?」

という流れになりやすかったのだ。(というか私は前々から友人が、何もない男を選ぼうとする妹に失望しているのを聞いていたので、知らず知らずのうちに、友人が望む方に計らってしまっていたのもある)

 

そこへ友達の父が、しみじみと悟り口調で語ったのは、

 

「でもまあ長い人生で見たら、いいとこ悪いとこ、お金があろうとなかろうと、どんな人でも大体同じよ」

 

という、人間万事塞翁が馬的な、この上なく寛容な言葉だった。

そこで一旦、「収入ある人を探したら」、「そうでなくとも何か自分を持っている人を」と言っている私たちがまるで浅はかな人間かのように映ったあと、

「ところで彼のどんなところが好きなの?」と私が妹に聞くと、妹は「優しいところ」と答え、

「ヴィジュアルはどんな感じ?」と聞くと「ちょっと太ってる」と答えると、

さっきまでしみじみ悟り口調で寛容な姿勢を示していた父親が、

 

「え?太ってんの?収入も低い、儲けたいという野心もない、あれもない、これもない・・・で、しかも太ってんの?・・・いいとこ無しや〜〜〜〜ん」

 

と言って、家族で爆笑。

 

彼氏を笑い者にしているという風にも取られない危険な会話だが、友人の父も結婚した当時は月収12万くらいだったらしく(と言っても数十年前の12万だが)、「どんな人と結婚しても幸せ度数は大体同じ」という物の見方も持ってる父からすれば(この考えも嘘なわけじゃない)、その場の会話を楽しんでいるだけで、具体的にその彼氏をどうこう言っているわけでもないのだ。

だから妹も一緒に爆笑している。

 

要は婚活の会話としては全く生産性のない会話なのだけれど、32の娘に対してこれだけ生産性のない会話を楽しめる家族の心の余裕はすごい、というか、むしろ家族がそれだけワイワイ楽しめてしまい、しかも裕福な彼らは自分たちの家族だけでも幸せがすでに完結していて、本当に心から家を出ていきたいという気持ちがないのかも、という気がしたほど、幸せそうだった。

 

私の家族は生産性を求めて価値観をぶつけ合うスタイルなので(会話の目的は笑いというよりも、お互いの価値観を確認し合う意味合いが強い)、ここまで生産性を求めずに会話を楽しめる家族が私にはとても「幸せな家族像」に映り、そんな幸せな家族があるんだなと思いながら、帰宅した。